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私の世界

「私」は世界と同義語になり、こうして私は世界となった。
世界は私にされてしまった。
広大な景色の3メートルから先は、予算の都合で書き割りになった。
ベニヤ板に塗られた水溶性の永遠性に気づかないためには、大量の麻酔剤も必要だった。
欲求と不安はお互いの腹話術で脚本を引き延ばし、やっつけ仕事で日々のドラマを書きなぐっている。
夢と希望は暴力的に集金を続け、放送経費を維持している。
他者は半透明の影となり、いつどこで彼らを捕らえ、むさぼり食ってもよいのだった。

私は「私」以外を知らない。
私が「私」で、それ以外の者になったことはない。
私が破綻しても、ほかに行くところは無いのです。

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晩夏の夢

燃える椅子とダリア

共同体を持たないシャーマンは趣味の世界にいる。
自ら傷つけるが故に、治療の秘法を求めに行く。
それは原因に会いに行く旅だ。おかげで、決して終わることの無い旅だ。
あらゆる呪物と儀式が役に立たないのはそのせいなのに。

花が開き、唇が割れ、欲求と言葉が耳を聾するサイレンとなった。
雲の中で雨粒がふくれ、期待と電気が満ちていく。
花が叫ぶときは黙して待つほか無い。
それが自らしおれる日まで、満開のもと耐えるほかに無い。

塔は立っている。全ての扉と窓は開け放っている。
笛のように鳴る日をうなだれて待っている。
中は階段と読めない本とで少しの隙間ものこっていない。
風は吹かない。

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仲の国(Middle-earth)大五輪

大五輪開幕ですよ。
開幕式典では、パンダ大サーカスで西洋人の観客が猛抗議。五輪の輪が全部真っ赤。3時間に及ぶマージャン牌大ドミノで聖火点灯。バスケットボールのヤオ・ミンを模した全長50mの長征ロケットが打ち上げられ最後に落ちてくるなどは一切無く、脳内で醸造していたしょぼい妄想も忽ち雑菌の巷に早変わりです。ただ、人間活字のパフォーマンスで最後、活字のオブジェに入っていた演技者たちが一斉に顔を見せ、笑顔で手を振った場面が、ナイーブな社会主義芸術の一場面みたいな感じがしてよかったです。

選手入場の場面では、VIP席にふくだ、プーチン、ルカシェンコ、そして米国大統領に似た人がいるのを目撃。米国大統領に似た人がいたとしても、それは本当に本人なのかとこのごろ疑ってしまいます。その同じ人が、続く報道で星条旗を片手にはしゃいでいたり、よれよれのシャツにサンバイザーをかぶってビーチバレー選手の臀部をニヤニヤ眺めているように見える姿の写真が出回るにつけ、世界の重要な場面に押される「米国大統領」というスタンプがここにもあるだけで、しかしそれには落書きがなされているという妄想的解釈に悩まされるのであります。

プーチンは国があんな具合なので即帰ったみたいです。
グルジアの領内にある南オセチアって地域ではグルジア・ロシアの両軍が交戦しているのだけれど、国境を挟んですぐ北のロシア側にある北オセチア共和国の首都、ウラジカフカスにプーチンが現れて記者会見をしたらしい。このウラジカフカスという街は相撲の露鵬、そしてひなげしのような髷でおなじみ(なのか?)の白露山(二人は兄弟)の故郷であります。

いまのところ、敗退した男子蹴球をはじめいろんな競技を見ましたが、重量挙げとエアピストルがおもしろかった。どちらにも孤独で、緊張感に満ちた世界があるのです。バーベルや的はツールではあるけど、どうも最終目標ではない気がする。競技者は自らに起因するものごととのみ強烈に対峙しているように思える、生とはそんな場処かもしれんのですが、スポーツにおいてそれは一層濃密なのではないかと想像するのであります。

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生き物ノート


沢山のタリバンを記憶したものだった。
今ではムタワキル外相しか思いださない。


窓を長時間あけていた次の日、室内からダンゴ虫やこがね虫が出てきた。
外を歩いているとこがね虫をよく見つけるが、どれも死んでいるのは何故だろう。


窓のすぐ外にのぞく植物にイモムシが付いていて、日増しに大きくなっているので苦慮している。


bad mezzotintas 1
今年もできたよ!バッドメゾチント。今干しているよ。

bad mezzotintas 2
去年のバッドメゾチントはこれ。

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生き物ノート

ブラウンひまわり死亡。

死亡
鶏頭も死亡。

トワレットの扉に右手の親指を挟み、血豆が発生。

東京都で発生している野生のワカケホンセイインコ(≠ホンワカインコ)を初めて目撃しました。一羽だけで電線に止まり、ドルルッと頭を掻いていました。立ち止まって見ているとすぐに飛び立ってしまい、近くの枇杷の樹に入りました。緑色の羽毛に覆われた体が、枇杷の長い葉にまぎれて忽ち見えなくなったのであります。

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Cookbook

子供の頃は朝起きると楽しくてたまらなかった。
喜びがあり、興奮と期待感が甘いクリームのようにたっぷりとかかっていた。
一日は大きなケーキみたいで、食べ終えると次の日もまた次の日もそれが用意してあるのだった。

いやな朝もあった。
そういうとき、目を覚ます前から私は何かを思いだしていた。
記憶はくすぶり始めて、ぼんやりした狼煙のように薄い煙をたなびかせた。
その考えが空気を満たし、私は子供の形をした曇り空になってしまう。
知らない土地に旅をするような気分で、しかし歩くごとに自分の足が強くなる事もわかるのだった。

このごろ、朝起きて楽しいということはない。
しかも、歩くごとに足は衰えていく。
じっと煙のそばに立っている日も多くなった。
あの大きなケーキを思いだすけれど、考えるのはレシピのことだ。
その秘密の材料のことだ。

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木陰

公園の中を歩いていると、とても美しい場所が向こうに見えた。
広々とした芝生の一角に針葉樹を含む樹々が植えられており、瑞々しい葉をつけた枝が地面近くまで垂れ下がって、程よい明るさを持つ木陰ができているのだった。

そこに入ってみたいと思って足を向けると、樹林の入り口にある枝にベロンとカラスが止まった。カラスは明確にこちらを見ており、ボリュームを抑えたしわがれ声で3べん鳴いた。
そして落ち着かなげにモソモソしている。

私の中にとても小さな、しかし赤い色をした「!」が点灯した。
だがなぜか私はそれを無視して、カラスの横を通ると奥へ入ってしまった。
木漏れ日の下をゆっくりと歩いて景色をながめたが、長居できないような気がする。
振り返るとカラスは同じ枝の上から私を見ていた。
もう一度そいつの脇を通らないといけないのだ。
背後で、私の歩みに合わせて移動する翼の音が聞こえた。

元の道に戻ってみると看板が出ていた。
「この辺ではカラスに襲われる事があります」
そこに添えられたカラスのイラストは、何者かによって頭の部分が焼かれていた。絵の下にはカラスの巣を見つめたりしないようにといった注意書きが並べてある。
顔を上げてみると、先のカラスは何処にもいなかった。

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独立宣言後の世界

独立宣言後

私はいつも何かを考えているが、考えることは自分の輪郭をくっきりさせる効果がある。

朝眼を覚ますとすぐに考え始める。
その途端「私」と貼られた人形(ひとがた)が現れる。
世界は内と外に分かれ、内側ではあらゆることが始まる。

固有の領土、固有の意識、個人、個性。
国境を描き続け、自分以外が他者であると宣言する。
その前提で、他の国家と外交関係が結ばれる。
ウィッシュリストを交換し、条約を結ぶのであります。

身体の中に「私」はいない。
ただ混沌と考えがわき出しているだけだ。
なんだか不気味だ。そこには誰もいない。

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魔法の指

園芸が不得意

私は植物をうまく育てたことがない。
去年貰ったペチュニアの種が出てきたのでまいてみたところ、待てど暮らせど一向に芽吹かないのであります。それはモスバーガーで「モスの日」に配布されたもので、ヤシか何か植物性の剛毛で編まれた植木鉢に、土までセットされているという栽培キットなのでした。

植木鉢がむなしいので、次にグレープフルーツの種を埋めてみました。
レモンの種も埋めました。
しかし、音沙汰がないのであります。

去年のペチュニアは種が古くなっていたからとか、船便で届く外国産の果実には発芽防止の工夫がなされているからとか、芽が出ない理由を考えてみても何だか納得がいきません。

花も素早く枯れるのであります。
私は時折切り花を求めてきて、花瓶に入れておくのですが、いやに速く枯れる気がします。 朝は元気だったガーベラが帰宅してみると悉くぐなーんと項垂れていて、花弁がすぼまって箒のようになっているのを発見すると本当に萎えます。まだ3日と経たないのに、悪霊でもいるのでしょうか。あっ、いるな。いるよ。私でございます。

ガーベラを水に浸して茎を切り、放ってみると、睡蓮のように花がプカッと浮いて張りを失った花弁が広がり、見た目上は満開になったのでした。

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何処へ

080430

グュールデンウャーク(Golden week)ですね。呼称は何でもいいです。
折角の休日。なのに洗濯物を干し終えたらYouTubeで他人のインコ三昧であり、次に気がつくと心霊写真三昧という体たらくであります。一体どこから繋がった道なのでしょうか。インコと心霊写真は繋がっているのです。しかも久しぶりに心霊写真を見たらえらく怖いものに当たってしまい、散々で、気を紛らわすためにいろんなblogを見て歩いているとそこら辺にまたYouTubeへのリンクがあって、今度はえらく地味なおっさんがオペラを歌っているという、TV番組の映像なのです。

去年に評判だった動画だそうですが、私は初めて見ました。

冴えない男の才能(日本語字幕付き)
http://www.youtube.com/watch?v=0HYHKlcDsZI

英国の素人参加オーディション番組なんですね。
職業は携帯電話のセールスマンという中年になりかけの太った男が出てきて、何の愛想も無く「オペラ歌います」って言う。審査員はやれやれ…みたいな表情なんだけど、そのあと凄いことが起きる。

この人。
子供の頃から歌が好きで、イタリアでオペラを学んだもののプロにはなれず、生活のための仕事をしながら無給で地元の劇団に出ていたという、この時点で本物の歌手なんです。でも無名だった。それがこの番組に出て大人気になっちゃった。酔わせるような気持ちいいギャップとファンタジー、そういう勝手なヴィジョンを私は見たのですけど、他の人もそうなのでしょうか。この映像にあるマジックの一つはそこに源泉があると思います。

だけど歌い終わったあとの彼の顔を見ていると、今この人が触れているものに私も触れたいという猛烈な渇望を感じるのであります。
それはいかなる他者も与えられないものなのでありましょう。

ちなみにこの人。
このあとCDデビューを果たし、いま来日しているみたいなんです。
昨日と今日がコンサートだったんだって。ぶんか村で!

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何処へ

080429

「アルケミスト」
パウロ・コエーリョ著 角川文庫

この表紙の絵に見覚えがありました。
いつ見たのでしょう。これは、読んだことのない本なのであります。
ブラジル人の書いた小説で、宝物を探しにいく少年の物語だと云います。
私はあまり小説を読みません。しかし時たま唐突に、これという本が出てきます。
過去にその「前兆」が来たのは、アマール・アブダルハミードの「月」、カミロ・ホセ・セラの「二人の死者のためのマズルカ」を読んだときです。私は「アルケミスト」にも似た前兆を感じ、小さな文庫の本を買い求めたのであります。

半日ぐらいで読み終えました。
とても簡単な物語で、少年は宝物を探しにいくのです。
というか、自らの得た前兆を行動によって全うする決意をするのです。
「仕事を捨てて夢を追いかける話」と書いたらたぶん不正解です。
そこは本質じゃないのだと思います。
この少年はそして、本当は少年ではなく大人のような気がします。

物語は本を開いてみなければわかりません。
読み終えるとそれはほどけて、言葉も名前もすべての象徴も分解してしまいます。
その時、物語が何で出来ていたかがわかるのです。

物語の最終盤、193ページから以降の展開を私は全部知っていました。
知っているからには読んだことがあるはずなのですが。
それがいつだったか、少しも思い出せません。

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いわゆる日記

強い印象を得ると、頭の中では過去のデータを検索し始める。
以前に見たとか、知っている何かと照らし合わせようとする。
当てはめるべき定義を探している。
そのせいなのか、何を見てもノスタルジックだ。

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福田やすおです。

ふくだ内閣メールマガジンは、発行に莫大な税金が使われているのに内容は愚痴やボヤキばかりであり、道義的にいかがなものかという大衆紙の記事があります。

私はと申しますと、

  1. メルマガの原稿を秘書に口述しながら、ボヤキのあと片目をつむってみせる福田やすおを強く想像。
  2. 句読点「。」を全部「w」で脳内置換。「ねじれ国会w 福田やすおですw」
    「私は、いかなる課題についても、野党の皆さんと話し合う用意がありますw」

こういう感じで乗り切っています。どっちかというと1がお気に入りです。
ふくだメルマガをhtmlメールにする計画があるそうで、実施の暁にはリテラシー低いと一斉に言われるのでしょうけど、無駄なデコメールになったふくだメルマガに私は期待しています。ピンクの地になんかキラキラしてほしい。わけもなくリラックマとかいてほしいです。似顔絵もいっぱいで。

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虻のホバー 蝉の亡骸

蝉

虻が宙に浮く春の日。近所で蝉が死んでいるのであります。

間違った季節に蝉が出てくるということはあるんでしょうか?
何かが変だと告げるのは本能ばかりで、それを黙殺するのも本能であり、プログラムの裏で悲鳴を上げるかすかな洞察さえも彼らにはないのでありましょうか。樹液の味はよろこびを与えず、何も起こらないことに希望とも絶望とも名を付けないのでしょうか。

そうだとして何になりましょうや。
今やすべては過去になり、残るのは解体を待つ実在だけなのであります。

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ふたたび公園

きょう公園の池では、岩という岩の上に亀が乗っていました。
彼らは日差しを浴びながら、暑い砂漠のトカゲみたいに片側の手と足を宙に持ち上げています。ある亀などは女の拳程度に水から突き出た岩の上で、両足をそろえて真っすぐ後ろにのばし、まるで飛行しているような格好になっているのでありました。

鴨の群れに混じって一羽だけ鵜みたいなのがいます。その鳥は繰り返し繰り返し潜って、水の中を全力疾走しているのであります。その速いこと、泳ぎの滑らかさを見ると、空を飛ぶことも出来る生き物とはとても思われない。けれどもとなりの池にいる空中戦艦のような鯉の他は、魚が少しもいないのであります。鵜はもぐり続けて、ついにはその姿がまるで見えなくなり、ただ水面が激しくうねっているばかりになりました。

飛行する亀の両手はそっと水に浸されており、冷たい液状の世界と連絡を保っています。鵜は空腹のまま亀のいない岩の上にあがると、翼をめいっぱい広げました。暗く鮮やかな紺色の生き物なのであります。翼は茶色く、すっかり濡れた羽毛はウロコのように見えます。細長い首をもたげている姿はドラゴンの類いみたいで、その偉容にひかれて人類が集まってくると、鵜は気まずくなって再び水面へ飛び降りてしまうのでした。

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