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よじれる虫

虫全般が好きなわけではないんです。

何日か前、今秋初の栗ご飯を炊きました。栗は皮付きのものを買ってきて、17個むいたら3ヒット。ヒットとは何か。栗をむいた時に、誰か入ってることがありますよね。鬼皮をはぐと、渋皮の上に黒っぽい入り口のようなものが見えて。包丁の先でそっとまくってみると、ぴくりと密かな反射が返ってくる。

私はこいつが大変苦手なんです。栗に住んでるやつがです。そこで今回も栗の実ごとやつらをコンビニ袋に入れ、口をかたく縛ったうえ速攻でごみ置き場に…行くはずだったのですが、この日に限ってゴミ出しを忘れたのでした。

2、3日あとのこと。その日も何回となく台所を通り、何事もなかったのに、深夜足を踏み入れた私はふと違和感をおぼえて立ち止まったのであります。床の一部が動いている。なにかが、よじれている。小指の爪ほどの、栗の実色をした袋のようなものが1つ、そこにうごめいていたのであります。

私は入り口に立ったきり、3分ほど毛穴をすぼめながら、よじれる存在を見ていました。突然振って湧いた人生の試練。ここに、いてはならないものがおります。この存在を許可できない。排除したい。でもできない。排除に至る全てのプロセスを許容できない。一体どうしたら。

深まる混乱とシンクロするように、存在は床の上をループしています。小さな体に見合った小さな円を描き、足のない体で歩き回っては、かすかに身をよじる。動くにつれてシワの沢山入った胴の上を電灯の光が移動していく。針の先で突いたほどの茶色い頭を床に向けている。こんなやつとは戦えない。しかし気付きました。どうやら土に潜りたいのだ。体内でブレイクした変化へのプロセスに駆り立てられているに違いない。

そう考えると何だかあわれな気持ちになり、紙片を取ってきてやつのループ経路に置いてみました。うまいことその上に乗ります。このまま運び出すしかない。ゆっくりと紙片を持ち上げてみると、太い体が紙の上でコロコロ転げていく。ああいかんいかん。変なところに落としたら大爆発だ。それは魂の死をもたらす。

皮膚にしみ出るへたれの湿気を全身に感じながら私は玄関を抜け、紙を両手で捧げ持って、まるで暗黒舞踏の人のような怪しすぎる足取りで真夜中の通りへ出ていきました。土のある場所を目指す。早くしないとこちらがサナギになってしまいそうだ。ようやくそこへたどり着いて紙の輿を傾けると、栗の虫は闇の中を転がり落ち、草間に見えなくなったのでした。

紙の上に何もいないことを確かめてから、私はそれを握りしめ歩き去りました。心持ち早足で。やがて小走りに。恐るべき真夜中の笑顔を浮かべたまま。梶井基次郎が「檸檬」で書いたのはこういう気分だったのかもしれない。

家に帰った瞬間ゴミ袋をつまんで捨てに行ってきました。

| いろいろ | 23:19 | comments(0) | trackbacks(0) | TOP↑

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