Cookbook

子供の頃は朝起きると楽しくてたまらなかった。
喜びがあり、興奮と期待感が甘いクリームのようにたっぷりとかかっていた。
一日は大きなケーキみたいで、食べ終えると次の日もまた次の日もそれが用意してあるのだった。
いやな朝もあった。
そういうとき、目を覚ます前から私は何かを思いだしていた。
記憶はくすぶり始めて、ぼんやりした狼煙のように薄い煙をたなびかせた。
その考えが空気を満たし、私は子供の形をした曇り空になってしまう。
知らない土地に旅をするような気分で、しかし歩くごとに自分の足が強くなる事もわかるのだった。
このごろ、朝起きて楽しいということはない。
しかも、歩くごとに足は衰えていく。
じっと煙のそばに立っている日も多くなった。
あの大きなケーキを思いだすけれど、考えるのはレシピのことだ。
その秘密の材料のことだ。
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